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情報セキュリティマネジメント試験 令和7年度 公開問題(過去問) 問12 解説

情報セキュリティマネジメント試験 令和7年度 公開問題(過去問) 問12 について解説します。

問題

問12 経済産業省が取りまとめた “DX レポート 2” では,組織が DX 実現に至る段階をデジタイゼーション,デジタライゼーション,デジタルトランスフォーメーションに分けている。製造業のデジタル化事例において,デジタルトランスフォーメーションの段階に達しているものはどれか。

ア 3D 画像撮影用の高性能カメラを生産ラインに設置し,カメラの前を通過する製造物のデジタル画像をリアルタイムで記録して,出荷検査の証拠データとする。
イ 技術継承のために,生産ラインに設置したカメラと,熟練工の手に装着したウェアラブルセンサーによって,熟練工の所作をデジタルデータとして保存した上で,AI を用いて熟練工の動きをモデル化する。
ウ 顧客から販売・在庫情報を,部品メーカーから生産・在庫情報をデジタルデータで逐次入手し,AI を用いて複数の需給調整案を高速でシミュレーションすることによって,サプライチェーン全体を最適化する。
エ 生産ラインで取得したデジタル画像データから良品,不良品の特徴を AI に学習させた上で,AI で画像解析を行うことによって,自社の出荷時検品作業を効率化する。

解説・解答

問題文中の表ではDX実現までを次の3段階に分けています。
1. デジタイゼーション
アナログ・物理データをデジタルデータにするだけ。
(例) 紙の検査記録 → 画像やCSVにして保存
2. デジタライゼーション
個別の業務・製造プロセスをデジタル化して効率化。
(例) 検査工程だけ自動判定にする、技能継承だけAIで支援する
3. デジタルトランスフォーメーション
組織横断/全体の業務・製造プロセスをデジタル化。さらに「顧客起点の価値創出」のために事業やビジネスモデルまで変革。

それぞれの選択肢について確認します。

ア: 3D 画像撮影用の高性能カメラを生産ラインに設置し,カメラの前を通過する製造物のデジタル画像をリアルタイムで記録して,出荷検査の証拠データとする。
やっていることは画像をデジタルで残しているだけで、出荷検査のやり方やビジネスモデルまで変わっているわけではありません。アナログ情報からデジタル情報への変換レベルなのでデジタイゼーション止まりです。

イ: 技術継承のために,生産ラインに設置したカメラと,熟練工の手に装着したウェアラブルセンサーによって,熟練工の所作をデジタルデータとして保存した上で,AI を用いて熟練工の動きをモデル化する。
技能継承という特定の業務プロセスをデジタル化してAIで高度化しています。しかし、工場全体やサプライチェーン、全社のビジネスモデルまで変えている訳ではありません。個別業務のデジタル化・高度化なのでデジタライゼーションの段階です。

ウ: 顧客から販売・在庫情報を,部品メーカーから生産・在庫情報をデジタルデータで逐次入手し,AI を用いて複数の需給調整案を高速でシミュレーションすることによって,サプライチェーン全体を最適化する。
顧客(販売・在庫情報)と部品メーカー(生産・在庫情報)という、自社を含むサプライチェーン全体の情報をつないで、その情報をもとにAIで需要と供給の調整案をシミュレーションしてサプライチェーン全体を最適化しています。これは自社の工場の一工程にとどまらず、取引先・顧客を巻き込んだ組織横断のプロセス変革であり、需要に応じた生産・在庫管理など新しい価値提供・ビジネスのやり方につながります。デジタルトランスフォーメーションの事例であり、これが正解です。

エ: 生産ラインで取得したデジタル画像データから良品,不良品の特徴を AI に学習させた上で,AI で画像解析を行うことによって,自社の出荷時検品作業を効率化する。
不良判定をAIにやらせて自社の検品工程を効率化しています。これは、あくまで一工程の自動化・省力化であり、サプライチェーン全体やビジネスモデルを変えるところまでは至っていません。個別業務のデジタル化・高度化なのでデジタライゼーションの段階です。

以上により、この問題の解答は「ウ」になります。